徹底した現実主義(Otto Scharmer氏の2022.1.4の記事翻訳)

オリジナル記事

画像 Kelvy Bird

親愛なる皆様、新しい年を迎えるにあたり、2021年を振り返り、2022年の意図を明確にするひと時を持ちたいと思います。2021年、私たちは何を学んだでしょうか?3つのことが、私にとって際立っています。

「謙虚さ」 私たちが2021年に起こるだろうと考えたこと、予測したことはことごとく、1年が経過する間に何度も変更を余儀なくされました。1月6日の米国議会議事堂への攻撃に始まり、加速する気候変動の影響、デルタ株とオミクロン株については言うまでもなく、現実は私たちの周りで変化し続けているということを何度も目の当たりにしました。私たちが確立した概念や知識の獲得方法は、より柔軟になる必要があり、エドガー・シャイン教授が言うところの “謙虚な探究 ”に道を譲る必要があります。

「振り返る力」 このような試練に社会がどう対応したかを振り返る中で気づいたのは、私たちがいかに頻繁に、直面している問題の原因を、自国内や自分自身の内側ではなく、外側に見出そうとするか、ということです。このような時代遅れの考え方はあらゆる文化に存在しますが、私の住むアメリカにおいては特に顕著です。20年前の2001年、9.11の同時多発テロは、鏡に映った自分自身の姿を見る機会を与えてくれました。「テロとの戦い」が始まって20年、そこに8兆ドルの資金が投入された後の今になって、私たちが戦っていた敵は、実はもっと身近なところにいたと気づかされたのです。

そして、2021年1月6日。ここでもまた、外からの脅威に対しては完全武装していた超大国が、白人至上主義による国内のテロ(つまり、内部から発生した脅威)に対してはまったく無力であることが明らかになりました。

私たちは今、「再帰的近代(内省的近代)」(reflexive modernity)の時代に生きています。ウルリッヒ・ベックの定義によると、それは私たちの過去の行動が現在の状況にますますしっぺ返しをしている、ということなのです。この時代は「人新世(アントロポセン)」とも呼ばれます。人新世においては、地球上の主要な問題のほとんどが人間によって引き起こされています。私たちが自らを鏡の中に見ようとしない限り、痛みや苦しみは増え続けるでしょう。

しかし、私たちが鏡に映った自分を正直に見つめるなら、視点を(分断された)サイロからシステム全体へと、つまりエゴ・システム意識からエコ・システム意識へと変え始めることができるはずです。そうなれば、私たちは集団として、システム全体として、軌道修正することができます。

エコロジカルな分断(自己と自然の分断)、ソーシャルな分断(自己と他者の分断)、スピリチュアルな分断(自己と本来の自己の分断)の間を埋めることで、根本的な再生に奉仕することができるのです。

プレゼンシング・インスティテュートは15年前、ただひとつの目的のもとに設立されました。それは、さまざまな機関・システム・コミュニティーが、エゴに基づいた活動からエコに基づいた活動へと変容するための方法、ツール、実践の場を開発し、それらへのアクセスを民主化することでした。そのことが、2021年の3つ目の学びに繋がります。

「行動への信頼」 希望及び行動への信頼は、現代の文化に大きく欠けているものです。我々の文化の底流には、抑うつ、不安、恐れが強く存在しています。では、希望及び行動への信頼はどこからやって来るのでしょうか?それらは、内面から生じるものです。それらを手に入れるには、私たちの内面をシフトさせる必要があります。

希望を、妄想的な楽観主義と混同してはいけません。希望及び行動への信頼は、徹底した現実主義に根ざしたものです。それは現在の状況だけでなく、可能性のフィールドをも考慮に入れた現実主義です。その可能性のフィールドは、姿を現すために私たちを必要としているのです。つまり、行動への信頼は「内面の仕事」であり、その仕事のためには私たちが最高の(未来の)自分の力を引き出すことが必要となります。

謙虚さ。振り返る力。行動への信頼。この3つの要素は私たちに何を求めているのでしょうか?それらは、認識、聞くこと、行動の中心となる点を内側(エゴ)から外側(エコ)へシフトさせるため、内側を耕すよう我々に求めているのです。認識の中心をシフトさせることはOpen Mind(開かれた思考)の本質であり、聞くことの中心をシフトさせることはOpen Heart(開かれたハート)の本質であり、行動の中心をシフトさせることはOpen Will(開かれた意志)の本質です。

私たちの文明のこの深い変革が、容易なことでないことは分かっています。一夜にしてできることではありません。私たち全員が、最高の自分自身となって何度も繰り返し立ち向かい続ける必要があります。しかし私は、人生で初めて、その変革が実際に手の届くところにあると感じています。それを実現させるために私たちはここにいるのです。大小を問わず、こうした変革の種がすでに世界中でまかれ、プロトタイプが試行されています。

どこで?と疑問を持たれた方は、こちらのリンクをご覧下さい。そうした前向きな変革のいくつかを垣間見ることができます。アニュアルレポート

私たちの文明にとって重要なさまざまな機関の抜本的再生は、どのようにして起こるのでしょうか?巨大資本、大手テクノロジー企業、大きな政府への委託によって、ではありません。うまくいくとしたら、それはありとあらゆる場所から働きかけるムーブメントによって火がついた場合でしょう。それは、ボトムアップ(下から上へ)、トップダウン(上から下へ)、ミドルアウト(中から外へ)、アウトサイドイン(外から中へ)の、セクターやシステムを超えた無数のイニシアチブによるムーブメントです。これらの種は始めは小さくても、根を張り、成長し、相互に繋がり、最終的にはより大きなエコシステムの活動方法を変えるために、大規模な協働を行うようになります。現在、この動きはまだ初期段階にあります。その可能性を最大限に実現させるためには、一流のサポート体制、つまり「変革のための学校」が必要です。

2022年から2023年にかけて、私たちはこのようなサポート体制をプロトタイプするというユニークな機会を得ました。それは、私たちがこれまで学んできたすべてを統合し、それを現れつつあるムーブメントと今後10年から数十年の間に起こる変革に対して活用していくという機会です。私たちのビジョンと意図は、これまで私たちが開発した方法、ツール、実践、道程を、「u.school for transformation(変革のためのu.school)」と私たちが暫定的に呼ぶ新たなプラットフォーム及びエコシステムの中で、統合し拡張していくことです。

この集団的な実践に参加したい方は、私たちのウェブサイト及び査読付きジャーナルをご覧ください。また、これらの活動を支援するために、こちらからご寄付を頂ければ幸いです。この10年、そして100年のうちで最も重要な数年が今、始まろうとしています。

冒頭の素晴らしいビジュアルを描いてくれた同僚のケルビー・バードに感謝します!

(訳者より)今回も、丁寧に訳文を見てくれたTae Abionさんに心から感謝します!